月夜の翡翠と貴方


「…今日も、帰ってきた記念として、公演を予定していまして…今日の時間スジュナを預ける人がおらず、公園に待っていなさいと……」

「…馬鹿じゃねーの、おっさん。泣くに決まってる。危ないし」


呆れたような目を向けるルトに、ラサバは苦笑いしながら「ですよね」と言った。

治安の悪いこの国で、幼い子供をひとりで置いて行くのはあまりに危険すぎる。

昨日の夜の酒屋でのことを思い出し、身震いした。


「……近々話そうとは思っているのです。拒絶されたとしても、諦めない自信はあります」

「…なら、早く言えよ」


俺らに任せてないでさ、と、ルトの最もな意見に、ラサバは情けなさでいっぱいな顔をする。

「明日と今日は……記念公演で、忙しくて…話すことで劇団が混乱するのは、避けたいのです」

うつむいたラサバに、ルトはため息をついた。


「…今日の夜は、どうすんの?」

「留守の友人の家を借ります。劇団のみんなは明日の準備で忙しいので、申し訳無いのですが」


苦しそうな、顔。

疲れているのが見て取れる。



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