月夜の翡翠と貴方


爽やかな水色のグラデーションが綺麗な、ドレス風のワンピース。

シンプルではあるが、細かに散りばめられた石がキラキラと光り、裾に可愛らしくレースが縫い付けられている。


「……………………」


…こんな服を着ていたのは、いつだっただろうか。

思い出すと曖昧なほどに、薄れてしまっている。

確か…………

頭上には華やかなシャンデリアがあって、窓には豪華な装飾が広がっていて。

ドレスが舞う、ヒールの音が響く。

…あぁ、いつだったろうか。

あの場にいた、私はどんなだっただろう。

このワンピースが似合うほど、大人ではなかった。

……違う。

私が、思い出したくないだけなのだ。

あの頃の、私なんて……



「わぁ、おねぇちゃんに似合いそう!」


突然聞こえた背後の声に、ハッとした。

振り返ると、スジュナがワンピースを見て、瞳を輝かせている。


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