月夜の翡翠と貴方
それは、思い出というより記憶のようで。
何年も前のことでもよく覚えていて、スジュナはそれを一生懸命に伝えてくる。
昨日の事のように語るその表情は楽しそうで、私も嬉しくなった。
「おねえちゃん!あのお店!」
スジュナに手を引っ張られついて行くと、小さな洋服屋についた。
中へ入ると見えたのは、親しみやすそうな雰囲気の店内。
並ぶ服を眺めながら、スジュナは懐かしむように頬を緩ませた。
「あのねぇ、ここでパパに、リボンのついたお洋服を買ってもらったの」
小さく音を立てて、スジュナが店内を歩き回る。
その様子を見ながら、私も店内を見回した。
綺麗な洋服が、並んでいる。
サイズは子供から大人まで、様々だった。
ふと、目線を横に向けて、足を止める。
魅せられたように、私は目の前のワンピースを眺めた。