月夜の翡翠と貴方


綺麗だ綺麗だと言われるこの容姿が、一体何に使われているか知れば、誰も綺麗だなんて、容易く言えなくなる。

だから、ルトが『綺麗』の一言でドレスを決めてしまわなかったことが、少しだけ嬉しかった。






さすが商業の街だけあって、ドレスを売っている服屋はたくさんあった。

あれからいくつか回って、なるべく店員にシンプルなものを持ってこさせる。

しかし、なかなか良いものがでてこない。

もともと、ドレスにシンプルなものはあまりないのだ。

豪華な装飾がついてこその、ドレス。

貴族がその権威を示すための、衣装だから。


店に入っては出て、また次を探す。

そんなことを繰り返し、もう空が日の暮れる頃になってきたとき。

何軒目になるかもわからない店に着いた。


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