月夜の翡翠と貴方
「やはり貴女は綺麗だな、と、改めて思ったのだ。不快な思いをさせてしまったら、すまない」
「…あ、いえ…ありがとうございます…」
礼を言うと、リロザは「昨日の男と、同じ事を言うようで悪いのだがな」と言った。
「…貴女の纏う雰囲気は、やはり平民のそれとは何か違うな。立ち振る舞いといい、とても上品だ」
「…そうですか?」
リロザは「ああ」、と大きく頷く。
「…食事の様子も、きちんと教養を身につけたもののように感じた。……貴女は、令嬢と言われても、なにひとつおかしくないな」
リロザは真剣な顔をして、そう言った。
「……ありがとう、ございます」
私は少し微笑んで、その目を見つめ返した。
....令嬢、か。
私は、少しだけ笑いたくなった。
心で目を閉じ、思い出す。
浮かぶのは、微かな声と音。
もう、ほとんど忘れてしまったそれらを思い出し、反芻する。