月夜の翡翠と貴方
私が眉を寄せ男を見ていると、男は「ああ」、と言って微笑んだ。
…ほ、微笑んだ?
「私は誰にでもこうなのです。気になさらないで下さい」
私は、思わず絶句した。
誰にでも…というのは、最下の身分である奴隷も、含まれているのか。
ルトの『友人』そのものの砕けた口調も珍しいが、敬語を使うのはもっと珍しいだろう。
珍しいというか、おかしい。
異常である。
「とにかく、これを着てください」
男はブラウスとスカートを丁寧に取り出し、私に渡す。
…この男なら、多少疑問を口にしても、答えてくれるかもしれない。
「…何故、これを私が?」
明らかに、裕福な平民か、下級貴族の召しもの。
奴隷などが着るものではない。
「…すぐに、脱ぐことになりますから。今は、早急に着ていただけませんか」
何故だか、男は申し訳なさそうに言ってくる。