駄文 集 【放文】
旅に出た。

小さな文化住宅が見えなくなるまで歩くと駅が見えてきた。
小さな駅には券売機だけある無人の改札だった。
僕は券売機で切符を購入していた。
できるだけ遠くに行きたい。なぜかそんな事を考えていた。海でもいい、山でもいい、何か大きな自然に触れたい……そんな気分だった。
三両編成の小さな電車はしばらくするとやってきた。
下りの方面だから海へと向かう列車だ。
手近な空いている席に腰をかけ車内を眺めた。
平日なのに制服を着た女子高生数人が車内でポテトチップスを食べていた。
「ジャガイモ……」
気がつくと僕の口からそんな言葉が漏れていた。
よくよく考えたら社会にはジャガイモが溢れかえってている事に僕は気づいてしまった。
そうジャガイモがない場所なんてどこにもないのだ。
つまり僕はジャガイモではなく油で調理されたコロッケが嫌いという事になる。
僕はおもむろに立ち上がり女子高生に向かって叫んでいた。
「車内でコロッケを食べるんじゃない!」
車内はしばらく沈黙が続いたあとに女子高生たちの爆笑と反論が返ってきた。
「コロッケじゃなくてポ・テ・ト・チップスなんですけどぉー」
僕は逃げたすように電車を降りた。
車掌は顔を伏せる僕をまじまじと見つめなから切符を受け取った。
逃げ出すように改札を抜けると、畑ばかりが広がっていた。
そうだ、そうだった……僕はもう何がコロッケでジャガイモなのか正常な判断が出来なくっていた。
そう僕はきっと狂ってしまったのだ。ジャガイモとコロッケも区別できない程に狂ってしまったのだ。
そう考えると胸の鼓動が早くなったのを感じた。
目頭が熱くなるのを感じていた。
僕は走った。全力で走った。流れる汗と涙で前が見えなくても走った。鼓動はもう耳元で鳴り響いてるように聞こえていた。
坂道を駆け続けると海が見えてきた。
防波堤を越えると荒波がうねるように灰色の海が広がっていた。
僕は叫んだいた。
「コロッケじゃありませーん!」
「断じてコロッケじゃありませーん!」
あふれる涙とこみ上げる酸味が口から溢れでた。
すっばくて油ぽい何かが口から溢れていた。
膝をつき崩れ落ちるの体を両手で支えながら口からすべてを吐き出していた。

すべてを吐き出した僕はつぶやくように海を見てつぶやいた。
「ジャガイモなんて嫌いだ……」
荒れる灰色の海の波音だけがあたりに響いていた。

ジャガイモかコロッケか……それが命題だ。

終わり

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