淫靡な蒼い月

さくら


知ってるかい?


桜は花びらを散らすその刹那、花びらを紅く染めるんだよ


まるで、今、まさに消えんとする、僕らのよう。


きみに初めて逢ったのは、ちょうど一年前のこの時期だったね。


大樹の夜桜を、満月のやわらかなミルク色のベールに包まれて、きみは見上げていた。


僕は一瞬できみに魅了され、その後はもう、無我夢中で、毎日、きみを欲して奔走した。


だけど、幾度肌を重ねても


何度、唇を奪おうとも


ミルク色のベールを纏うその柔肌に歯を立てても


奪えたのは……身体だけだった。


まるで桜の花びらのように肌が色を変えても、きみは決して心はくれなかった。


なぜならきみは……


“生き別れた姉”


実の、姉……。


姉弟だなんて、知らなかった。


僕は、自分が養子だなんて、知らなかった……。


まるで、強い磁石のように惹かれたあの気持ちは……


“血が繋がっていた”から……?


神に許されない僕は、今、きみと初めて出逢ったこの大樹の下で、自らを紅く染めた。


散る刹那の桜の花びらのように、恋に身を焦がし、罪を犯したこの身を、紅く紅く……。


紅い月に見守られて……


きみを、想いながら……


ごめんね……。


姉さん……。




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