淫靡な蒼い月
その先にあるもの
伸縮性のある布を乱暴にたくしあげると、まるで弾けるように、押さえ込まれていた二つの膨らみが、飛び出した。
窮屈な布地から解放されたそれは、俺の目には喜びでつやめいているように見えた。
早速、二つのうちの一つを口に含んで舌で転がす。すると、彼女の唇から甘い声が漏れた。
さっきまで、激しく抵抗していたのに、局部に這わせた掌には熱い湿気もまとわりついている。
既に他人のものである女を犯すのは、心地いい。
狂喜じみた快感が俺を取り巻く。
そう、俺にとって女は、常に“誰かのもの”でなくちゃならない。
そうじゃないと燃えない。
幼い頃に見た、父と母の秘密。
同じ部屋にいながら、互いに違う相手と裸で抱き合い、まるで獣のように声をあげていた。
何をしているのか、その時は判らなかったが、成長して、それが何だったのか知った。
たまらなく興奮したのだけ、今でも覚えている。
その興奮を再び得るには、“誰かのもの”である必要があった。
俺は抱いてる女の背中に、見えない相手を見る。
そして奪い取ったという優越感に浸るんだ。
見えない相手よりも感じさせてやると――。
局部を刺激し続けていた指が、しっとりと布越しに濡れる。
交互に口に含んでいた膨らみの先端ももう、大きく突起している。
唇から放たれる甘い吐息と声が、何よりの証拠。
白い柔肌もほんのり桃色を呈している。
俺の与える刺激にすり合わされる両膝が、絡み合う二匹の蛇のようにいやらしい。
もっと声を出せ。
もっと泉を満たせ。
重なり吸い付く素肌に、俺も興奮してきた。
今日の女は声がたまらなくいい。
“俺の物にしたい”
初めて“独占欲”を覚えた瞬間だった。
“誰かのもの”から“自分の物”へ
優越感を上回る独占欲と興奮。
細いうなじに舌を這わせながら、俺は女を激しく攻めた。
声が上がる。
腰が波のようにうねる。
一つになる二つの肉体。
あの時見た、父と母も、そう、最後はこんな感じだった。
二人とも、今の俺と同じように、興奮していたのだろうか?
優越感の先の独占欲を満たしていたのだろうか?
いや多分、彼らの場合は優越感の先の互いへの愛情だったのだろう。
そんな気がする。
女が俺を締め付け、俺は、敗北の声をあげた。