Seven Colors
大広場前。この道は比較的狭く、車よりは自転車や歩行者の行き来が多い。それも昼間の話であり、大広場を利用する若者が眠っているこの時間は、せいぜい黒猫が横断するくらいだ。
交差点と反対側からこの道に到着した二人は、バイクを隅に止めヘルメットを放った。
「そろそろ来ますよ、白石刑事」
黒王は先程よりは苛立っていなかった。落ち着いた様子で遠くを眺めているが、それがかえって白石を不安にさせる。
一歩後ろに下がった場所に立っている白石は黒王の機嫌を伺いながら、恐る恐るその背中に言葉をかけた。
「あの、黒王警部は奴を知っているのですか?」
振り返りはしなかった。
しかし遠くを眺めていた黒王の意識は確かに白石に向いた。純粋な疑問にどう答えるべきか、白石の方を向かずに考えている。
「私がまだ刑事だった時代に、二、三度あいつを追いました」
「刑事だった時代、あるんですか?」
「当たり前だ」
私を何だと思っているんですか、と言葉を吐き捨てる黒王であるが、いずれにせよ黒王が異例であることに変わりはない。
「しかし私はいつも一人であいつを捕まえていました。私が警部になった暁には、もうあいつを追うことはないと思いましたが……部下が役立たずで。ええ、非常に役立たずで!」
そう言われては、部下の白石は苦笑いするしかなかった。
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