クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
 結衣は出社する時、朝から携帯電話をマナーモードにしてある。
 めったにメールも電話もないので、一日携帯電話を開かない事もよくある。

 そんな時に限ってメールが来てたりするのだが、今日もそうだったようだ。


「ごめん。見てなかった。でもなんで? 三十日の夜には帰るって言ってあるのに」

「姉ちゃん、盆に帰るって言っときながら帰らなかっただろ。正月ぐらいは意地でも帰らせるって、オレが連行しに来たわけ」

「あの時は急に友達の代わりで旅行に行く事になったのよ」


 結衣は苦笑しながら、両親に告げたのと同じウソをつく。

 本当はクランベールにとんぼ返りして、三日後に帰ってきたら、こちらでは五日経っていたのだ。

 実家に帰る予定だった翌日の朝で、案の定、固定電話や携帯電話に両親や蒼太のメッセージが何件も残されていた。

 遅れて帰っても言い訳が立たないので、友達が急病になったので代わりにツアー旅行に参加する事になったとウソをついた。
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