ビター・スイート・ラヴ
 仮に性転換手術をして男に生まれ変わっても、身長も男としては低いし
体のパーツはどれをとっても華奢な造りで、どうみても男女だ。



 当時は今みたく著名人がカミングアウトしたり、性同一性障害と
認められれば戸籍の変更が可能になる時代じゃなかった。



 それに、どうしても体の違和感を感じてしまうこともなかった。



「男になりたい」という思いは、でも何処に行けば性転換手術を受けられる
のだろう? 費用はどのくらいかかるのか? など考えると現実離れしてい
て、それ事態を心の奥に仕舞い込んでしまった。



 高校二年の三学期ともなれば、そろそろ進路をどうするか考えなければ
ならない時期で真紀は自分はどうしたいのか、自分はいったい何者なのか
と深く考えるようになった。



 進学する意思はあっても何を目指すのかあやふやのままだ。とにかく、
何か特技というか手に職をつけたいと思った。



 ミチルは資格を取るため専門学校に進むという明確な目標を持っていた。



 真紀は入学当初は成績も優秀で常に学年で上位にいたが、今では成績も
落ちる一方だ。別にミチルとこういう関係になったからじゃなく自分自身
の目標を見つけられずにいるからだと思った。
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