イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*
「えいっ」


川に整然と並んでる亀の形の飛び石をわたって。

ブロックに足をかけて、草が伸び放題の小島へ上陸する。


(いつ来ても変わってないな)


あたしは草を踏み分けて、大きな木の木陰に座った。

暑いけど、風がそよそよと吹いて気持ちいい。


――やっぱりここに来たら落ち着くな。


あたしはひとり、満足げにうなずいた。


ここで人に会ったことは1回もない。

くつろげる、あたしだけの秘密の場所。



……いや、1回だけあったな。

小さい頃、どっかのお姉さんに会ったっけ。


冬なのにずいぶん薄着で、「寒い寒い」ってぎゃあぎゃあ叫んでた、変なお姉さん。


(何しよかな)


あたしは、カバンからケータイを取り出した。
< 13 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop