イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*
一抹の不安が胸に宿るのを、見ないようにしながら。


「突然ごめんね」


玄関に入ると、笑顔の美咲姉ちゃんが出迎えた。


「ううん、全然。

あのね、近くにおいしいケーキ屋さんができたから、ちょっと買ってくるわ。

すぐ帰るから、待っててね」

「え……そんなのいいのに」


だって今日はもう、チーズケーキもチョコも食べてお腹パンパンだよ。


「いいのいいの、あたしも食べたいから」


美咲姉ちゃんが笑顔でドアの向こうに消えるのを見送ると。

リビングにあがったあたしは、ソファでくつろぐ入江圭輔に、そっと聞いてみた。


「あの……あたしのこと覚えてる?」

「覚えてるって……覚えてるっつーか、知ってるよ」


ニッと笑う。


「あ、そう」
< 80 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop