死神少年
まるで通い慣れた飲食店でいつもの品を頼むような、そんな軽快な口調だった。
言葉が出てこない。人を、しかも知り合いを殺せと言われたら真っ当な人間は何と答えるだろうか。きっと「人の命を奪うなんて、そんな事できるわけないだろ」そうやって決まりきった文句を言うのだろう。
だけど、たとえ真っ当でなくとも、それが今の無力な俺にとって姉さんを救う唯一の方法なのだ。
「それで?」
写真をひらりと青い月明かりに翳(かざ)すと、キシッと音を立てて俺は回転椅子に座った。
「いつ殺せばいい?」
くすっ
ジノの小さな笑いがその白い歯の間から薄暗い部屋に漏れる。
「恐れ入ったよ音穏、あんた、人を殺すのが恐くないんだ?」
「恐くないわけないだろ」
「さぁ……どうかな?」
上品に口元に手を当て、ジノはくすくすと笑った。
「へぇ、そんな風にも笑えるんだな、あんた。初めて見たよ、そんな上品に笑ってるとこ」
ジノは口元から手を離す。一瞬、眉を潜めたが、すぐにまたくすくすと笑いだす。
「俺はいつだって優美で、お上品じゃないか」
「さぁ……どうかな?」
俺はジノの真似をして口元に手を当てながら小さく笑った。
「知らなかったな、あんた以外と皮肉屋だったんだ」
「皮肉屋でも、死神にはなれるだろ?」
ジノは少し黙り込むと、ニヤッと悪戯な笑みを浮かべた。
「ふふっ……あんた、やっぱ素質あるよ。」
「死神の?」
「ああ。あんたみたいな奴、初めてだ。人を殺せと言われて、そんなに楽しそうな顔をしたのは、あんたが最初だよ」
「それは、褒めてるのか? それとも……」
「4日だ。4日に殺せ」
ジノは俺の言葉を掻き消すように言った。
その声に先ほどの軽快さは無い。
「8月4日に殺せばいいのか」
思わず俺の声も低くなる
「そうだ いいか、4日だぞ。早すぎても遅すぎても駄目だ。必ず、4日に殺せ。」
ジノはやけに真剣だった。初めて見た彼の真剣な顔に思わず笑みがこぼれる。
言葉が出てこない。人を、しかも知り合いを殺せと言われたら真っ当な人間は何と答えるだろうか。きっと「人の命を奪うなんて、そんな事できるわけないだろ」そうやって決まりきった文句を言うのだろう。
だけど、たとえ真っ当でなくとも、それが今の無力な俺にとって姉さんを救う唯一の方法なのだ。
「それで?」
写真をひらりと青い月明かりに翳(かざ)すと、キシッと音を立てて俺は回転椅子に座った。
「いつ殺せばいい?」
くすっ
ジノの小さな笑いがその白い歯の間から薄暗い部屋に漏れる。
「恐れ入ったよ音穏、あんた、人を殺すのが恐くないんだ?」
「恐くないわけないだろ」
「さぁ……どうかな?」
上品に口元に手を当て、ジノはくすくすと笑った。
「へぇ、そんな風にも笑えるんだな、あんた。初めて見たよ、そんな上品に笑ってるとこ」
ジノは口元から手を離す。一瞬、眉を潜めたが、すぐにまたくすくすと笑いだす。
「俺はいつだって優美で、お上品じゃないか」
「さぁ……どうかな?」
俺はジノの真似をして口元に手を当てながら小さく笑った。
「知らなかったな、あんた以外と皮肉屋だったんだ」
「皮肉屋でも、死神にはなれるだろ?」
ジノは少し黙り込むと、ニヤッと悪戯な笑みを浮かべた。
「ふふっ……あんた、やっぱ素質あるよ。」
「死神の?」
「ああ。あんたみたいな奴、初めてだ。人を殺せと言われて、そんなに楽しそうな顔をしたのは、あんたが最初だよ」
「それは、褒めてるのか? それとも……」
「4日だ。4日に殺せ」
ジノは俺の言葉を掻き消すように言った。
その声に先ほどの軽快さは無い。
「8月4日に殺せばいいのか」
思わず俺の声も低くなる
「そうだ いいか、4日だぞ。早すぎても遅すぎても駄目だ。必ず、4日に殺せ。」
ジノはやけに真剣だった。初めて見た彼の真剣な顔に思わず笑みがこぼれる。