死神少年
「それで? 」
部屋のドアを閉めるとキシッと音を立てて俺は回転椅子に座った。
「テストって、何をすればいいんだ」
電気をつけようか迷ったが、結局やめた。
月明かりをみているのが心地よくて、それを消してしまうのがひどく勿体ない気がしたのだ。
壁に背中をもたれたジノは「なーに、簡単だ」と言うと月明かりの中、不気味に笑う。
「俺が指名した人間を、指名した日付に殺ればいい」
俺は絶句した。
ただのテストではないだろうと思ってはいたが、まさか人を殺せと言われるとは予想できなかった。
「どこが簡単なんだよ」
「簡単じゃないか、胸にナイフを刺せばいいだけの話だろ?」
俺が立ち上がり、反動で椅子は少し後ろへ下がる。
「ふざけるな」
「ふざけてねぇよ、俺は真面目だ。」
奴の口から笑いが消える。
ジーンズのポケットに入れていた両手の内の一つを取り出して何やら爪を気にしながら「やらねーのか?」とジノは問う。
「やる」
「そう、その目だ」
ジノは自分の目元を指差しニシニシと笑う。
本当にこいつはよく笑う奴だ。まったく何が愉快で笑ってるんだか、死神であることが信じられない。
俺の鼻先に、奴の細長い人差し指がピンッと立つ。
「テスト期間は一ヶ月」
「期間……なるほど、殺すのは一人だけじゃないってわけ」
ジノは弾んだ声で「正解」と言うと、「ほらよ」と一枚の写真を手渡す。
そこに写っていたのは同じ部活の先輩の佳山という男だった。
「これは?」
「手始めに、そいつを殺せ。」