遊びじゃない

で、あと少し…と思っているうちにはや2時間。

これってすごいよ、大記録達成。
こんなにひとつの場所でじっとしていたことなんて人生で一回もない気がする。
明日が土曜日じゃなかったら絶対しない奇行だわ。ある意味ストーカーだし。

なんてことを考えながらも視線だけはエントランスを捉え続けていたら、相変わらず冴えない黒縁眼鏡と、もさもさしたくせっ毛が視界の端に映る。

弱そうな背中を睨みつけながら、カツカツとヒールを鳴らして背後に立つ。

「なんで知ってたのよ。」

疲れたように肩を落とす男は、一瞬考えるように足を止めてからゆっくり振り返る。

「え……まおちゃん?」

「え、じゃないわよ。なんで知ってたのかって聞いてるのよ。」

「もしかして…待ってたの?」

「だからっ、質問に答えて。」

「ごめんね。電話してくれたらもっと早くに出てきたのに。」

仁王立ちの私と、泣き笑いのような顔で近づいてくるゆう。
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