遊びじゃない
「ほんと、色気がない 」
仮にも男女が一緒に寝るのに、しっかりパジャマと部屋着を着用なんだから。
気乗りせずにしぶしぶベッドに近寄ると、にこにこ笑いながらもくいっと軽く腕を引っ張って私の身体を捕らえるゆう。
「いいの。これ以上まおちゃんが色っぽかったら、ダメ」
背後から包み込まれ、首元にはゆうの吐息やら洗いたての髪の毛を感じる。
意識しないでおこうと心がけるのに、抑制のきかない身体はドクドクと脈打ち始める。
「じゃあ抱きしめたりしなきゃいいのに」
自分の気持ちを誤魔化すように、心とは反対のことを呟く。
「いいんだって。このほうがまおちゃんが悲しくないかわかるから。眠るまでこうしてる。それだけでいいから」
唇を空気にさらされた肩に押し付けながら呟いたきり、室内には時計の秒針しか聞こえない。
月明かりだけで照らされた部屋で、二人の息使いだけが静かに重なる。
触れ合ったところからじんわりと温かくなってくる足先がゆっくりと穏やかな眠気を誘う。
……よかった。今夜、一人じゃなくて。
途切れ途切れになる意識の中で、最後に心のそこから安心したのを覚えている。