遊びじゃない

「尿検査お願いします。トイレの奥にある窓口に出して頂ければよろしいので。その後はこちらで採血検査をお願いしますね」

促されるままトイレで検査を提出し、あれよあれよと採血もされる。

その間わずか数分のことなんだろうけど、採血が終わってソファに視線をやると、不安げに周りを見渡している挙動不審すぎるおじさん。

気の毒に思えるくらい緊張するゆうを見ていると、ますます冷静に落ち着いてくるから不思議で。

「ゆうが緊張してどうすんのよ。私は大丈夫だから。もう、覚悟はできてる」

しっとり汗ばんだゆうの手を握りながら笑う余裕まで出てくる。

「まおちゃん……」

こういう時って女のほうが肝が据わってるっていうか、もういよいよとなると無駄にジタバタするのがバカらしくなる。

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