届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

30 たずね人


洋服はドロドロ、腕や顔や足はすり傷だらけ。

なんとも悲惨な格好でホテルに帰った。

すぐにシャワーを浴びて、洋服はゴミ箱に入れた。

この服を見ると今日の事を思い出しそうだから。

シャワーのお湯が傷にしみて。

痛いんだか?

辛いのだか?

涙が溢れてしょうがない。

お兄ちゃんじゃなかった喜びと安心感。

それが一番大きかった。

また家に連れ戻されなくて済むから。

あんな生活には耐えられない。

思い出すだけで、切り裂くような痛みが心の中に走る。

ゾクゾクと、寒気が全身を駆け巡って。

めまいのような感覚と、ガンガンと頭の中からカチ割られるような痛み。

立っている事すら不可能。

なんとか気力を振り絞って、ベッドまでたどり着くような状態。

濡れた髪が顔にまとわりつく。

そのベタベタした感覚で顔がかゆくなる。

「あぁ~!!もうっ!!!」

大きな声を上げ、頭から布団をかぶった。

< 262 / 570 >

この作品をシェア

pagetop