届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

「何がいい?」

「…偽造の身分証が欲しいの。」

今のあたしに一番必要な物。

なにかあった時に必要だし、携帯を持つにも必要だから。

「だったら尚吾に聞いてごらん?アイツなら、そういうの得意な奴知ってるから。今のアイツなら『お座り!!』って言っとけば、大人しくなるから。」

満面の笑顔で答えると、大きく手を振って部屋から出て行った。

「ちょっと!!秀!?」

慌てて呼び止めたけど、むなしくドアは閉まってしまった。

尚吾に会いに行かなきゃなの?

どんな顔をして会えばいいの?

恥ずかしいし、顔なんか合わせたくない。

秀は何も知らないからあんなこと言うけど。

勇気とかそういう次元の問題じゃなくて。

こういう時に、携帯があればメールで言えるんだけど。

…今は逃げてる場合じゃないか。

その携帯自体を手に入れないとだもんね。

着替えてメイクしてドアノブに手をかけて

「よっしっ!!」

気合を入れた。

だけど、なかなかドアを開ける勇気が出ない。

一時停止したように体が動かない。

「やっぱり、気まずいよ~。」

ボソボソと独り言を言いながら、かれこれ20分もドアノブに手をかけたまま。

今日は辞めようかな~?

でも、早く携帯欲しいし…。

「あぁ~!!もう!!!」

バンッと勢い良くドアを開けた。

そして、何も考えないように全力で走ってホテルを出て行った。

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