届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

44 1年越しの花火


霧生くんの家に向かう途中の国道の信号だった。

目の前の視界に大きな花火が見えた。

近くで、花火大会をやっているみたい。

バシバシと霧生くんの背中を叩くと、嫌そうな顔をして振り向いた。

ヘルメットで声がこもっちゃって、霧生くんには聞こえないから。

指で夜空いっぱいに広がる花火を指した。

返って来たのは、不思議そうな顔を浮かべて首をかしげながら、前を向いちゃって。

花火見たいのに!!!!

力いっぱい霧生くんの背中をバシバシ叩いた。

もう、振り向くこともしてくれなくて。

結局、信号が青に変わってバイクは動き出した。

「せっかく花火見たかったのに…。」

ブツブツと、ひとり文句を言っている。

視界から花火が消えかけた陸橋のど真ん中で、急にバイクが止まった。

何か起こった?

驚いているのはあたし1人。

霧生くんはバイクを止めると、ヘルメットを脱いだ。

「花火見たいんだろ?」

ちょっと不機嫌そうに消えかけたはずの花火を指差した。

「うん!!!」

元気良く返事をすると、バイクから飛び降りてヘルメットを脱いだ。

陸橋沿いには、何台も路駐して花火を見ている人がいる。

立体交差の所だから、ビルに邪魔される事もなく花火が一望できる。

手すりに寄りかかって花火を見上げた。

ヒュルルルルル…

ド~ン!!!!!!!!

大きな音と共に、目の前いっぱいに花火が広がる。

絶え間なく、何度も打ちあがる花火に見とれてしまった。

「ねぇ、なんか黄色い花火って、ヒマワリみたいだよね?あのヒマワリの鉢植え覚えている?」

隣で見ている霧生くんに声をかけた。


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