届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「あぁ…うん。」
言葉さえ出てこない。
まるで狼に狙われた小鹿のよう。
「キミが紗羽の彼氏の尚吾くんだね。」
立ち上がり手を差し出した瞬間
バチン!!
あたしが思わず叩き払った。
「帰ろう。尚吾。」
お兄ちゃんに向けた冷たい視線を外すと、少し興奮気味の声を上げた。
「…う…うん。」
少し興奮気味のあたしに、圧倒されたみたいに。
戸惑いを浮かべながら尚吾も立ち上がった。
周りは状況を把握出来ず、ポカンと見ているだけ。
「ごめん。俺が来たばっかりに、せっかくのランチを邪魔しちゃって。」
お兄ちゃんが謝りながら、慌てた表情を浮かべた。
「気にしないで。兄妹だからって、何も言わずに呼んだ私が悪いんだし。」
お兄ちゃんの腕をつかむと、悲しそうに眉をゆがめた。
「違うよ。妹の彼氏が見たかっただけで、来ちゃった俺が悪いんだから。美緒ちゃんは気にしないで。」
優しくほほ笑むけど。
100%お兄ちゃんの芝居だ。
あたしは知っている。
その優しい微笑みの下の本性を。
「ありがとう。」
嬉しそうな美緒ちゃん達。
こうやって周りをダマしていくんだ。
「紗羽。お兄ちゃんが帰るから、みんなと楽しく食事をしていきなさい。」
財布の中から5万円を出すと、テーブルに置いた。
「秋くん気にしないでよ。」
「いや。食事を台無しにしたお詫びだ。それじゃあ。」
軽くお辞儀をして、あたしの隣を横切った瞬間。