届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

61 最後の答え


初めて会った日から、走馬灯のように頭の中で次々に思い出す。

懐かしくて、温かい思い出ばかり。

自然と涙がこぼれた。

霧生くんがいなくなった時、ずっとそばにいて笑わせてくれた。

真冬に裸足でワンピース一枚で脱走したこと。

あの時、初めて尚吾に対して恋愛感情が芽生えて。

…尚吾を失いたくない。

強く、強く心の芯から思った。

ギュっと、膝の上で両手を握り締めて真っすぐに尚吾を見た。

「あたし、尚吾が大好きだよ。」

「あぁ、知っている。だから泣くなよ。」

そう言って照れ笑いを浮かべた。

だけどあたしは、真剣な顔をして目をそらさない。

「だから、あたしは尚吾とは付き合えない。」

ハッキリ言った。

「…意味わかんねぇ。」

ビックリして固まった。

「好きだから、選べないの。」

真剣な目からは、涙が止まらない。

好きだから失いたくなくて。

好きだから、幸せになって欲しくて。

いつかは、お兄ちゃんに見つかるかもしれない。

尚吾を守る為には、これしか方法がない。

本当は、離れたくなんかない。

ずっと、そばにいて欲しいのは尚吾なのに…。

それでも現実を考えれば、あたしと一緒にいたら不幸になるのは目に見えている。

ここで尚吾を選ばない事が、あたしの愛の証拠で。

これしか尚吾を守る手段が思いつかない。

それが、幸せになれるって事だから。

選ばない勇気も必要なんだって…。

「オレには、意味がわかんねぇ。」

イラついている空気が体に巻きついて重たい。

「尚吾があたしを守ってくれるように、あたしも尚吾を守りたいから。」

「何から守るんだよ!?」

「全てから…これ以上、大事な人を失いたくなんかない。」

「オレは簡単に死なねぇし。」

「……あたしは、何かあるたびに不安になる。今日だって、お兄ちゃんが尚吾に何かしたのかって不安で仕方なかった…あたしは、泣き虫で臆病者だから。」

「確かに、泣き虫で臆病者だな。」

呆れたような口調だけど、落ちてくる涙を優しくぬぐってくれる。

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