届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

「花火。」

ポツリとつぶやいた。

「えっ?」

聞き返す海翔。

「花火したい。」

「花火って…どこでするんだよ?」

「マンションのベランダ。」

「はっ?ベランダで出来るわけないだろ。」

「ヤダ。花火したい。」

ムッと口をとがらせながら。

ジッと海翔の顔を見上げた。

「ダメなものは、ダメなんだよ。」

「なんで花火しちゃいけないの?」

「ベランダなんて、ご近所に迷惑だろ。それに、この辺は公園ないからできないから。」

子供を諭すかのように優しく答えた。

そうだよ、ここまで一緒な分けがないよね。

…霧生くんに最後に会った夜。

ご飯を食べた帰り道。

大きな花火が空一面に広がって。

あたしが花火を見たがったら、霧生くんは乗り気じゃなかったけど付き合ってくれた。

その時の切なそうな、何かを考えている霧生くんの顔が今でもハッキリと思い出せる。

その夜、甘くて優しい初めてのキスをした。

かすかに泣いていた霧生くんに、理由なんか聞けないまま、霧生くんは居なくなっちゃった。

「じゃあ、もういいよ!」

別に、海翔は悪くないのに。

不満そうに、スタスタと歩き出した。

「…っとに。」

つぶやきながら海翔も歩き出した。

家に着いたときには、花火の事は忘れるているかのように笑ってTVを見ていた。

だって、霧生くんは死んじゃったから。

これ以上、思い出しちゃったら泣いちゃうと思う…。


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