届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

蔵橋英弥(くらはしひでや)。

オレと同じ年の警察庁キャリアだ。

「何でアイツが?」

ポツリとつぶやくと、溜め息混じりにドアの前に立った。

「お元気そうで。」

オレの顔を見るなり、ニッコリと微笑んだ。

「キャリアが、何の用事ですか?」

その言葉には、ため息が混じる。

「お元気そうか気になって。」

嫌味な口調は相変わらずだな。

この蔵橋英弥は、元は同じキャリアとして警察庁に配属になるはずだった。

しかし、オレのあまりの失敗ぶりにオレだけ警察庁から外された。

なのに、勝手にライバル視している男だ。

冷徹な面持ちににらまれたら、身動き出来なくなるような人を見下す様な冷たい目つき。

蔵橋を一言で表すなら、冷酷という言葉が相応しい。

蔵橋の存在自体にイラっとしている。

「たかがそんな事で、オレの所に来たんですか?」

冷ややかな口調なのに。

蔵橋はただ怖いくらいの微笑を浮かべている。
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