届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「そうか。ごめんね。バタバタで…。」
口元をゆるめながら謝る男の顔が、ゆっくりとあたしの視界に入った。
恐る恐る上げた視線。
男の顔が見えた瞬間。
…あれ?
この人確か。
前に会ったことあるような…。
何かが脳裏に引っ掛かっている。
「ごめんな。森崎。すぐに行くから。」
「分かった。」
森崎って…確か。
お兄ちゃんが嘘をついて、あたしを連れ戻そうとした時、補導した警察の人だ。
嘘でしょ?
驚きすぎて、目の焦点が定まらない。
どうしよう。
あたし…本当のあたしがバレちゃった?
でも、暗くてよく分からないよね?
お兄ちゃんに見つかる?
どうしたらいいの?
あたしの顔を見て、海翔は不思議そうな顔をしている。
「あの…。」
何を会話したらいいの?
「どこかで会ったことあった?」
森崎も不思議そうな顔をしながら、あたしの顔を見た。
でも、すっかり忘れているみたい。
「あの、昔…ほら、海翔が警察官になりたての時…。」
コツンと海翔の腕を突いた。
「そうだったような…。」
2人で笑って誤魔化した。
海翔は違う理由だと思うけど。
…多分、森崎って人は。
あたしを覚えていなよね?