届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

76 繋がり始めた糸


次の日には帰ると、海翔が出かけようとしていた。

「また、朝帰りですか?」

大きなため息をつきながら、あきれた顔を浮かべる。。

そんな海翔の顔なんか気にしない。

「おはようございます。」

だって、ちょっぴり機嫌がいいから。

ミュウも見つかりそうだし。

尚吾が少し元気になってくれたから。

だけど、海翔の反応は驚いているとかじゃなくて。

むしろ、眉にシワを刻みながら。

「やっぱり…男か。」

いきなり襟元をつかんだ。

「なっ…なに!?」

あたし、何か変なかっこうしてる?

それとも、何かついているとか?

「キスマークが付いているぞ。」

深いため息をつきながら、パッと襟元から手を離した。

それと同時に。

慌てて首元を手で押さえた。

昨日の尚吾のだ。

どうしよう…

変に誤解するよね?

まさか、あんなのでキスマークつくなんて思わなかったから。

必死に言葉を探して。

「関係ないじゃん。海翔だって、女とヤることヤってんでしょ。」

プイッとそっぽを向いた。

思わず出たそれが、精一杯の答えだった。

「やっていません。そんな暇はないです。」

「なんか、いつもあたしが暇みたいでムカツク。」

「暇だろ?男の所に泊まり歩いているだけで。」

「海翔があたしの何を知っているの?あたしにだって、色々と事情があるんだけど。」

ムッと口をとがらせた。

「ほ~う。その事情とやらを聞きたいですな。」

ジッとのぞき込んできた顔。

「…言えない。」

とっさに目をそらした。

言えるはずなんかない。

尚吾の話をするってことは。

あたしの…

本当のあたしを話さなきゃいけなくて。

ギュッと胸が苦しくなる。

< 543 / 570 >

この作品をシェア

pagetop