タイ·ミー 《密フェチ》
全てを侵食する


「…ひっ!」


その感覚が全身に走るより先に、自分の上擦った声が鼓膜を震わせた。
その感覚を捕らえるや否や、続けざまに生暖かい息が耳元にかかる。


「さて。俺は今、何をしようとしてるでしょうか?」


蜂蜜のようなリキッド状の声を垂れ流され、全身が痙攣する。
それと同時に、太股の付け根辺りに向かって、ゆるゆると何かが這い上がって来た。
ぬめっとした生暖かいその感じは、恐らくは舌先。


「…あ、やだ…わかん、ない…」


閉ざされた真っ暗な視界、アイマスクの向こうで、彼がどんな顔をして、どんなふうに私を見ているのか。
彼の次の行動は、自分の肌に触れるまで皆目検討もつかない。
五感のひとつを塞がれたせいで、他の部分が異常なまでに敏感だ。敏感すぎる。
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