涙が途絶える日まで
香北は私たちの地元で、

中学のすぐ近くだ。

私たちの学校は

「豊中」って呼ばれてる。

前からずっとこの呼び名。

結構通う人が多いんだよね。

そんなことを考えていると

「瑠美。」

いつの間にか

來弥が来たがっていたところについたらしい。

「ついてきて。」

『うん?』

そういうと來弥は道からそれて

道路のわきの川原の方へ歩いていく。

ちゃんとした道はないけど

足元の草がしおれてるから

きっと來弥がよくくる場所なんだろう。

『いたたっ。ちょ、來弥ー?』

「はーやーくー」

『むふっこんなとこ通れないよぉー』

くっつき虫や包丁草、

貧乏草などが生い茂っているせいで

なかなか前に進めない。

しばらくあるくと

ちいさな道があった。

『來・・・弥?』

通れんのここ?

やっとの思いで通るとそこには

來弥が寝転がっていた。

『え。』

さっきまで通った場所とは全然違くて

生い茂った草はなかった。

けど一面に芝生が生えていて

緑のじゅうたんの横に

川が流れているように見える。

いたって普通の川原なのに

まるで漫画の世界に来たかのような

衝撃だった。

「気に入らない?」

そういうと私に手招きをした。

『すごい。こんなとこ知らなかった。』

「ふはっ」

またこの笑い方。

「俺ここ大好き。誰もこねぇし。

 1人だけで静かに寝れる。

 だから誰にも絶対内緒にしてた。
 
 秘密基地ってやつ?」

今度はにぃって歯を見せながら笑っていた。

つられて私も笑顔になる。

『でも、私知っちゃったら

 來弥だけのものじゃなくなっちゃうよ』

來弥はなぜか一瞬真剣な顔になって

また笑顔に戻った。

「クサいから笑わないで。
  
 俺、いつか大切な人できたら

 ここに連れて来ようって決めてた。

 俺と、大切な人、

 二人だけの大事な場所にしようって。 

 俺が好きになったやつだ。

 ぜってー愛しぬくし、結婚する。」

來・・・弥。

「ふふ。キモいな俺。瑠美。」

『ん?』

「大好きだよ。」

私今本当に幸せだ。

『來弥ぁ~』

泣きながらだけど私もちゃんと言ったの。

「どーした?」

『私も大好き。來弥が大好きだよぉ』

この時初めてうれし涙を流した。
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