あと数時間で
アラームが起床時間を告げて
“今日”が始まる。

今までずっと考えていた。

『どうやって“今日”から逃げようか』

「死んだら逃げられる。」
すぐに思った。

でも、揺らいだ。

「楽しいことなんて無い毎日だけど……辛いことばかりだけど生きていたい。」

そうだ。好き好んで今、
こんな風に生きている訳じゃない。



強く目を閉じる。
視覚が閉ざされ真っ暗になる。

聴覚が拾うのは
時計が時を刻む音と
窓の外に流れる車の音。

時は止まらずに世の中は動き進み続けていることを告げられているみたいだ。

そう……自分一人死んだからって世の中は止まらないんだ。

「なんて虚しいんだ……」

なんだか怖くて目を開けられない。

目を閉じてじっとしたまま動けないでいると
聴覚が鋭敏に音を拾う。

少し荒くなった規則正しい自分の呼吸音。

自分が生きていることを意識せずにはいられない音。
いつの間にか『自分の呼吸音』に聞き入っていた。

もう出なくなったと思っていた涙が溢れ出てくる。

『こんな風に生きたいわけじゃない』

なんだか悲しくて……なんだか悔しくて……
泣いた。
声に出して泣いた。



どれくらい泣いただろう。

静かに目を開く。

開いた視覚に飛び込んで来たのは


暁の空。





夜が明ける。
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