あのこになりたい
「ここにいます」


私は、トイレの外で立っていた。



若菜さんはトボトボ歩いてトイレに入って行った。



「お兄ちゃん…何やってんのよ…」


私は一人つぶやいた。



これから起こるあらゆることへの覚悟を一足早くしていた。



若菜さんがトイレから出て来た。



「咲ちゃんが見て…」


と、言って私に渡してきた。



私だって怖いよ…



「わかりました…」


若菜さんから受け取った検査薬を持って部屋に戻った。


私もなかなか勇気が出ずに、何度も深呼吸した。



「見ますね…」


私は覆っていた手を外した。


線は出てるけど…


説明書読まなきゃ!



私は説明書と検査薬を照らし合わせた。



「赤ちゃん…出来てます…」


私の言葉に、若菜さんは凍りついた。



「嘘…」


若菜さんは私の手から検査薬を奪い、見た後、机に顔を付けて動かなくなってしまった。



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