あのこになりたい
二階へ上がる途中でふとシュンの話を思い出して兄の部屋に向かった。


コンコン


ノックすると足音が近づいてくるのがわかった。


「はい…」


兄は少しドアを開けた。



「ちょっと…いい?」


私が言うと兄は黙ってドアを開けた。



なんとなく周りを見回してベッドの下に目をやった。


「何…?」


兄は軽く眉間にしわを寄せて言った。



「いや…別に」


シュンが変なこと言うから…


シュンの笑った顔が頭に浮かんだ。



「お兄ちゃん…有田俊二って知ってる…?」


兄は名前を聞いた瞬間、私の顔を見た。


兄と目を合わせたのは何年振りだろう。



「有田…なんで?」


兄は驚いた顔のまま聞いた。



「偶然会ってね…むこうが私覚えてたみたいで」


「そう…」


兄はまたふせ目になった。


「お兄ちゃんに会いたいって言ってた…」


兄の返事は予測できた。



「…やめとく」


やっぱり。



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