あのこになりたい
「でも…悪い人ではなさそうだったよ…?」


私は兄の顔色を見ながら言った。



「うん…変わってなければいい奴だよ。たぶん…」


兄の言葉に少し光が見えた。



「じゃあ…」


私の言葉を遮って兄が言った。



「でも無理。誰にも会いたくないんだ。こんな自分見せたくないんだ…」


「でも…」


「ごめん」


兄の小さな声には強い意思が込められていて、それ以上何も言えなかった。



兄の心の傷は深い。


人によってつけられた心の傷はそう簡単には消せない。


私にも消せない傷がたくさんある。



自分の部屋に戻りベッドに腰かけた。


シュンにとっては残念な結果をお知らせしなくてはならない。


気分が重いのは…シュンを傷つけてしまいそうで。



でも、そんな簡単にいくわけないよ…というシュンの単純さに対して、


「ほらね」


という気持ちもあるのは確かだ。



< 23 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop