あのこになりたい
「有田に心配されるなんて…俺も落ちぶれたな」


長い間引き込もってたせいで兄は人が変わってしまったのか。


それとも心の中にずっと潜んでいたのか。



兄の言葉にシュンの顔は険しくなった。



「俺はもう可哀想じゃないよ」


シュンは冷静にそう言った。


「岡田…子どもの頃、俺のこといつも可哀想って言ってたな。でも、俺は可哀想じゃない。お前も…」


胸ぐらを掴んでいる兄の手を離した。



「待ってくれる人もいるし、思ってくれる家族もいる」


シュンは起き上がった。そして、


「岡田。つまずいたらまた立ち上がればいいだけだ」

そう言って笑った。



兄は泣いた…


兄はもしかすると待っていたのかもしれない。



このドアを開いて連れ出してくれる人を。



私達は、ただ守ることばかりを考えていた。


だけど、守り過ぎて兄から生きる気力を奪ってしまっていたのかもしれない。


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