烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2
祖父は上官に脅されて病身の女性を銃剣で刺した。
その女性が死に際に渡したロケットペンダント。

なぜか捨てきれず、この烏鎮に捨ててきてくれと、
鎮魂の65年が一瞬にして写し重なる。

捨てようとはしたのだろうがどうしても捨て切れなかった。
命に深く刻まれた大罪の意識は絶対に一生消滅はしない。
死んだ後も永遠に宇宙に残るものだろう。

祖父の苦悩の映像が夢の中で反復する。すがるような絶望
の眼差しが急に大きくなって静江に迫る。静江は大汗を
かいて早朝目を覚ました。

朝食を済ませて景区へと向かう。大きな石橋のふもとで
遊覧券を買うと景区遊覧図が付いていた。よく見つめると
9つの大小の橋がかかっていて1.5kmほど先の一番東

詰めに、逢源双橋という屋根の付いた木の橋がイラスト入
りで載っている。
『この橋だわ双橋というのは。なぜこの橋からと祖父は
指定したのだろう?』
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