烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2

烏鎮(うーちん)

12月、霧雨の中、静江は烏鎮に着いた。
上海南站からバスで2時間。烏鎮のバスターミナルは
ぬかるんでいた。夕方はもう日が暮れかけて、

薄暗がりの中から客引きが現れる。
とにかく宿所を探さなければ。

一見上品そうなおばさんが旅館の名刺を出してきた。
青年旅館100元と書いてある。

「熱水、空調、テレビあり。80元?」
「空調不要。60元?好?」
「60元好。看一看」

向かいの路地裏の安宿。ペンション風で若作りだが
やはり隣の音は丸聞こえで熱水は出なかった。

幸い景区はすぐ近くで歩いて回れそう。ゆっくりと
その夜は眠るつもりだったが、夢にうなされた。


65年前この地で杭州から上陸した日本陸軍歩兵部隊は
各村々を襲い略奪し虐殺し焼き尽くして南京を目指した。
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