なんでも屋 神…最終幕
蝶番から放たれる、年代物の軋む音。



その次に鼓膜を刺激したのは、鈍く聞こえるが何処か軽い金属音。



咄嗟に身体を後方に飛び退かせ、聴覚に全神経を集中させて次に聞こえてくる音を待った。



…だが、何も聞こえてこない。



静寂と言えば静寂だが、遠くの方からはメインの喧噪が聞こえてくる。



数分程その姿勢で待ったが、やはり物音は続かなかった。



エレベーター脇に有る、蛍光灯のスイッチを手探りで探し出す。



二、三度の点滅の後、ゆっくりと灯った蛍光灯の光を頼りに、事務所の中へと入っていく。



両側に有る窓からはネオンの光が射し込んでくるが、デスクの周りは未だ薄暗く、はっきりと確認する事が出来ない。
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