なんでも屋 神…最終幕
艶の有る髪を撫でるように、俺の胸元へ引き寄せた。



長い髪から香る匂いが、鼻先で戯れる。



右腕は括れたウエストのラインを包み、左手は細い項に手を回して唇を重ねた。



夏の悶えるような夜気でさえ、今の二人の間に漂う空気の熱さは適わない。



絡ませた舌を名残惜しそうに戻し、もう一度しっかりと一葉を抱き締めた。



「家に帰る前に、一杯だけ[トレイン]でコーヒー飲んでく。」



俺の右肩を額で少し押すように、一葉は何も言わずに頷いただけだった。
< 420 / 447 >

この作品をシェア

pagetop