深紅の薔薇と漆黒の貴方
珀黎王は一瞬虚を突かれたような顔をしたが、その表情はすぐに、今にも笑い出しそうなものに変わる。
あぁ、この表情が腹立たしいのだと納得した。
人を馬鹿にしたようなこの表情が。
思わず怒鳴りつけてしまいそうになったとき、珀黎王が口を開いた。
「貴女は本当に変わった方だ。そしてとても面白い。
気に入りましたよ?貴女となら上手くやっていけそうです。」
嬉しそうにそう言って、我慢の限界とばかりに笑い出す。
「馬鹿にしないで頂きたい!!!」
あまりの無礼に、こちらも我慢の限界だ。
「私は麗蓮を、自分の国を弦黒にいいように侮辱されたも同然なのですよ!!??」
すると珀黎王は笑いを収めて、急に真剣な顔になった。
「それに関しては言い訳はしません。しかし、弦黒が間違っていたとも思わない。」
そうしてまた微笑む。
「だから、賭けを致しましょう。」
「賭け?」
あまり理解出来ない私に、彼は頷く。
「二年後、私は王になって五周年を迎えます。それまでに、貴女が私の妻になりたいと少しでも考えれば私の勝ち。
しかし、貴女が二年経ってもそう思わなければ、貴女の勝ちです。
...その時は、私はおとなしく貴女に殺されましょう。」