深紅の薔薇と漆黒の貴方
すると王は胡散臭そうな驚きの表情を浮かべて、
「奇遇ですね。私も丁度眠れずにいたのです。よろしければご一緒したいのですが。」
だが彼女も、いくら夫にでも自由な時間を邪魔されるのは気分が悪い。
「いえ、申し訳ないのですが私一人がようございます。」
きっぱりと言い切った。
ついつい、してやったりという顔をした李玖を見た王は、残念だと落ち込んだ・・・
しかしその顔も長くはもたなかった。
すぐに表情を崩し、李玖に言う。
「では、別々に散歩をすることにしましょう?」
この男の心理が判らない李玖だったが、考えるだけ疲れると思考を無理に停止する。
まぁ、邪魔しなければよしとしよう。
「分かりました。ただし、お互いに干渉は避けるということでしたら。」
「では、行くとしますか。」
間髪いれずに言って立ち上がる王。
その顔には
またも笑み。
(よく笑う男だ・・・)
そんな事を思い、李玖も彼の後を追う・・・・・ように胡蝶蘭の間を出た。
この先に待ち構える、甘い悪魔の罠も知らずに。