深紅の薔薇と漆黒の貴方
ひそむ罠
翌朝、目覚めた李玖は、気だるげに布団から身を起こして窓に目をやった。
外はまだほんの少し明るくなったばかりで、まだまだ夜の名残がのこっている。
もう少しだけ眠っていようと考えて布団に戻ったが、昔からの性質上、二度寝は出来そうにない。
外に出て夜風でもあびてこようかとふたたび布団を出ようとする
.....が、出来なかった。
隣からのびてきた白い腕に、自分の腕をしっかりと掴まれて、まるで身動きが取れないのだ。
引き抜こうとしても全く抜けず、次第に苛立ち始めた頃、隣から人が動く気配。
寝相の悪さに文句でも言ってやろうと隣を睨むと、黒髪の女、否、珀黎王の感情のない瞳に射抜かれて、言葉をなくしてしまった。
そんな李玖を見て、王はまたニコリ。
「おはようございます。愛しの奥様。」
「おはようございます。」
虚をつかれて返すと、彼はさらに嬉しそうに笑った。
「ずいぶんと早いお目覚めですね?まだ夜は完全に明けていません。」
「少し散歩でもしようかと。眠れませんので。」