深紅の薔薇と漆黒の貴方
覚悟
話のあと、佳燕に付き添われて部屋に戻った李玖は、その中に入って絶句した。
なんと、部屋の中は彼女が普段決して身につけない筈の打ち掛けや装飾品、それに、ギラギラと鬱陶しい光を放つ宝石の数々で溢れていたのだ。
「これはどういうこと?」
不思議に思っていたが、すぐにはっとした。
このきんぴかのものは、弦黒への嫁入り道具で、鬱陶しい宝石たちは持参金の代わりだ。
現実をまざまざと突きつけられたような気がして、途端に虚しくなった。
私はこの持参金たちとともに、弦黒の道具として嫁に行かねばならないのだ。
どうせ侵略に利用されるだけなのに、これだけのものを揃えて。
そう思うともう何をするのも嫌になって、彼女はそのまま、布団に倒れこんだ。
眠りから覚めれば、なにか違っているかもしれない。
もとの毎日が戻ってくるかもしれない。
そうだ、これは夢なのだ。
そんな淡すぎる期待を胸に、李玖は眠りについた。
これからはじまる辛い現実の日々から、目をそむけるようにして....。