アーティクル
 桜が舞う頃、近くの公園では、深夜になっても、賑わいがあった。
 子供を預け、夜遅くまで仕事をしている母親たちが、月明かりに集(つど)っていた。
 
 子供たちは、まるで昼間のように、遊んでいる。
 
 誰にも、何かを言われる筋合いはない。

 母と子が一緒にいられる時間が、深夜しかなかったのなら、彼等にとって、その時間こそに意味があるのだ。

 満開の桜は、月明かりに照らされ、公園に集う親子を祝福した。


 さようなら。
 さようなら。

 公園の賑わいはもう望むべくもない。
 桜の花びらが、無人の遊具に注がれる。

 この村に、子供はいない。

 たった一人の子供が、この村から旅立って行くから。

 学校が閉鎖されることで、この村の歴史の一頁に、そんな母子たちの想い出も、大切にしまい込まれた。
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