アーティクル
 祖母は言った。

「私の全ては、孫のお前にあげるよ。お前の周りにあるもの全ては、おばあちゃんのものだからね」

 祖母は、名義がどうこうといった話をしたが、賢司に難しい話は解らない。

「その代わり、頼みを一つだけ、聞いとくれ」

 祖母はそう言って、賢司の耳に囁いた。

 最初は面白そうに耳を傾けたが、やがて、顔色を失い、耳を塞いで、その場に座り込んでしまった。

 祖母の言葉は、新鮮な血液のように生温かく、無慈悲で、残酷だった。



第十話 『祖母の願い』

完結


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