[短編] 昨日の僕は生きていた。
「…あれ?」

 視界に町並みが広がった。

 壁に体当たりした身体は、なんと壁をすり抜けていたのだ。相変わらず浮いたまま、宙を漂う僕。

「これは…透明人間ってやつ?」

 道で犬の散歩しているおばさんも、宙に浮く僕には気づいていないようだった。

「どうしよう。」

 誰か話せる人がいれば…。
 そこで僕に名案が浮かんだ。

「そうだ。香織ちゃんのとこに行こう!」

 ――香織ちゃんというのは、僕の彼女だ。
 確か霊感があるって言っていた。彼女なら透明になった僕が見えるかもしれない!

 僕はさっそく宙をもがきながら、香織ちゃんの家を目指した。




 比較的近所にある香織ちゃんの家にはすぐ着いた。
 宙を移動するのにもだいぶ慣れたし…。

「なんか久しぶりな気がする。」

 香織ちゃんの家を見て呟く。

 いつも一緒に高校から登下校しているから、昨日も会ったはずなのに。
 ちなみに僕は毎日、香織ちゃんを自転車の後ろに乗せながら学校までの坂道を登校している。これが結構辛いんだ。

 香織ちゃん怖いから我慢してるけど。

「お邪魔しまーす」

 適当な壁から家の中に入った。
 そこは廊下になっている。
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