なつものがたり






高校の卒業式が終わり、

大学の入学式が終わり、



俺たちは、マンネリ化を迎えた夫婦のように




いや、俺は違う。




百合子は、ただの惰性として俺と付き合っていた。



俺は百合子が好きで、

百合子は俺に不満はない。

だけど、好きでもない。




そして、俺には仲のいい友達ができた。





綾瀬果歩。



それは、百合子にとって絶好の材料であったに違いない。







「桜井くん、

あなたにはもう、綾瀬さんがいるでしょう?

あたしの必要性がなくなったの。



お願い、別れて。さようなら。」










いくら、果歩は友達だと主張しても

彼女は一歩も譲らなかった。



ただ、綾瀬さんがいるでしょう?

と繰り返すのだ。





だからといって果歩にいなくなれ!

とは、言えないし、


こんな恋愛沙汰に巻き込んで
友だちを失うことが怖かった。


そして何より、

俺を好きじゃない百合子を目の前にして
自分を惨めに感じてしまった。





それから俺は、自暴自棄になり、


百合子に見せつけるように

女好きをフルに活用し、


自分の虚しさを埋めて行った。





なのに、果歩や友人と過ごす時間以外は






虚しさで埋めつくされていた。








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