なつものがたり












「そう、だな。」




そう返事をするのが、やっとだった。







百合子が果歩に嫉妬するってことは、本当に俺を好きな証拠?














なんだよ、それ。


なんだよ、

ただの独占欲?

俺の普段の生活は考えてくれてないってことだろ。

百合子には昔の俺しか、見えてないってことだろ?









なのに




なんで素直に従おうとしてんだ、俺。






自分のアホさに呆れる。

果歩と百合子を天秤にかけたくはない。



親友と彼女、

両方とも失いたくないってのは、ただのわがままなのか?























結局、その翌日、果歩の家まで訪ね、ドライブをした。











2人で遊んだことは山ほどあるのに、この日はじめて発見する果歩の一面ががたくさんあった。










失くしてしまうヒトを前にセンチメンタルになっているせい?

いつもの五倍増しくらいに可愛く見えたり、女らしく見えたり、なにより、楽しくて楽しくて。


百合子について語ることは、苦しくて苦しくて。






二年前、百合子のことを吹っ切るのにも、めちゃくちゃ支えてもらったことを痛感して、こんな最高の親友を女だからって理由で手放す行為が疑問で。






けど、百合子は執拗に果歩とのことを指摘してくることが目に見えてて。






俺は、情けないけど恋愛と友情、恋愛を取る体質で。













果歩、わりい。

ほんと、ごめんな。





そんなに悲しい顔、見たくねー。






今まで、ありがと。













果歩を見てたら色んな感情で、パンクしそうんなって、気付いたら抱きしめてた。








けど、抱きしめたことを後悔した。














はじめて抱きしめた果歩は見た目よりもさらに華奢で、「あぁ、女なのか」って。
「こいつも女なんだ」って思い知らされたから。












果歩を家まで送り届けた帰り道、どうしようもない気だるさを感じた。











なんだよ、これ。






俺は、やっと、百合子をまた手に入れられたのに。






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