なつものがたり





なんで、じゃがバターって言っちゃったかな。



大学の友達と希鷹と、初めて行ったお祭りで希鷹と半分こして食べたことを思い出す。







もう、二年も前か。


あの時の希鷹は蒲田さんにフラれて間もない頃。



















蒲田、さん?














人混みの中に人目を引く、美人がいた。

綺麗に浴衣を着こなした蒲田さんと目が合う。





蒲田さんの近くにある、大好きな髪の色。




その人はこっちを向いていないけど、

渋い色の浴衣をきていて…



間違いなく、希鷹の、背中。

















「急にどーした?腹でも痛くなったか?!」








春の手を引っ張り、



進行方向に背を向けた私。

希鷹の姿から、目が離せない。















希鷹が急に横を向き、


その横顔に蒲田さんは、





キスを、した。






















付き合ってんだから、当たり前じゃんか。


ズキズキと痛む胸は、気のせい。

気のせい、気のせい。







なのに、好きな人のキスシーンを見て泣くって、なんだこりゃ。




なんだ、これ。









ズキズキが、収まらない。

希鷹も、じゃがバターを買いに行くとこ?



大好物だもんね。

それを、蒲田さんと半分こすんの?












ある意味、運命なのかな?

もう、希鷹のことは諦めろってお告げ?




もー。頭、おかしい、自分。

涙が、止まらないや。












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