君の知らない空
「この車、買ったの?」
「いや、営業車。一応就職決まってさ、社長が好きな車を選んでいいって言ってくれたんだ……いい色だろ?」
少し恥ずかしそうな桂一の言葉に、胸が痛んだ。安心しながらも私は、確かな距離感を感じている。
「うん、綺麗な水色だね。
新しい仕事見つけたんだ……よかったね、営業? ってキツくないの? 大丈夫?」
「仕事は楽なんだ。営業って言っても、
ノルマとか全然ないし結構自由だし、
続けられたら……な、いいかなって」
「そんないい仕事、よく見つかったね」
「ああ、大学の先輩の紹介なんだよ。だから今度こそ頑張らないとな」
桂一はハンドルから片手を離して、首筋を軽く揉むように掻いた。
照れ臭い時の桂一の癖。
桂一と別れて約半年。
いい友達でいようと言ったけど、今日まで連絡を取り合ったことはない。
半年ぶりに会った桂一の笑顔は、あの頃と変わらない。
でも、私の知らない桂一になっていく。